ドイツのクリスマスのお菓子Stollen シュトーレンをはじめて知ったのは大学生の時でした。東京で生まれ育った私は自然の中でお菓子を作ることに憧れて山の中のペンションによく居候に行っていました。そこのご主人がドイツパンを修行した方で、12月になるとたくさんシュトーレンを焼いていたのです。イーストで発酵させた生地に、数ヶ月前からリキュールに漬け込んだドライフルーツを練り込んで焼き上げます。その焼きたてをたっぷり溶かしたバターの鍋にドボン。引き上げたら粉砂糖を真っ白になるまでまぶします。外は白樺の林に雪が降り積もり、甘い香りの暖かい厨房にずらりと並んだシュトーレン。私の心の中にある大切な時間を思い出させてくれるお菓子です。
最近はクリスマス前になるとドイツ菓子やドイツパンのお店でなくてもシュトーレンを見かけるようになりました。パン屋さんはじっくり発酵させた粉を味わう生地、お菓子屋さんはずっしりとドライフルーツやナッツをたっぷり入れた焼き菓子風と作り方も様々なようです。私のシュトーレンはあまり発酵させないパティスリー風。20年以上前に漬け込み始めた自家製のラム酒漬けレーズン、初春に仕込んだオレンジピール、軽く空焼きしたアーモンドダイス、そして中心にはマジパンをそっと包み込みます。
ドイツやオーストリアにはマジパンを使ったお菓子がたくさんあります。Mandeln Bäckerei マンデルベッカライもそのひとつ。マジパンにバターと粉砂糖を練り込み、卵白を加えて絞り出して焼きます。まわりはサクッと中はねっとり、マカロンのような味わい。見た目は素朴ですが、とてもリッチな味のクッキーです。
マジパンは砂糖とアーモンドを挽いて練りあわせたものです。ケーキの上に飾りで乗っているお人形などに使う砂糖の配合の多いマジパンと、アーモンドパウダーの多いローマジパンまたはマジパンローマッセがあります。シュトーレンやマンデルベッカライに使用するのはローマジパンで、製菓材料店で購入することができます。有名なのはドイツのリューベッカー製(写真右)、とても美味しいのですが高級品です。そこで今回はアーモンドパウダーに粉砂糖と卵白、手作りのマジパンもご紹介しました(写真左)。